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「2019年、一番心をさらわれたドラマには“ワケあり”が表現されていました」

今宵、どんなドラマを描こう 第11回

1位 『腐女子、うっかりゲイに告る。』

主演・ 金子大地 2019年4〜6月放送 NHK総合

<あらすじ>

“母子家庭で暮らす安藤純(金子大地)、高校3年生、実はゲイ。年上の恋人はいるけれど、不安定な状況にいつも心は揺らいでいた。そんな気持ちを癒すかのように、SNSで会った『ファーレンハイト』と心を通わせていた。同時に、普通の男子高校生として生きたい気持ちから、同級生の三浦紗枝(藤野涼子)とも交際を始めるようになる。”

 今年の春に4年に1回くらいのペースでしかひかない、風邪を患った。それも高熱が続くという最悪のパターンで、とても苦しかったことを覚えている。もう仕事を諦めて、溜まったドラマ録画を見始めた。そこでハマったのが『腐女子、うっかりゲイに告る。』だ。存在は知っていたけれど、NHKとは思えないほどの思い切ったタイトルだと思った程度で、あとからまとめて見ようとしていた。それが見始めた瞬間、その世界観に引き込まれていく。

 主人公がゲイであることはそんなに珍しくもないけれど、高校生という多感な時期が設定というのはあまり聞いたことがない。自分の本当の姿を隠さなくてはいけないと必死になる純。でも抑えきれなくなる衝動。描かれていく葛藤は、すべてが切なかった。彼が校舎から飛び降りたときは、泣いた。

 一瞬だったけど、純の彼女になった三浦さんの存在も大きかった。純のすべてが校内に知られても、変わらずに側に寄り添い、

「彼はいつも(周囲に)透明な壁を作っています。でも、それは自分を守っているんではなく、私たちを守っているんです。(中略)僕をなかったことにしないと、世界を簡単にして解いている問題が解けなくなってしまう。彼は自分が嫌いで、私たちが好きなんです!」

 泣いて、全校生徒に訴える姿はカッコ良かった。それから主演の金子大地さん。絶妙な長さの前髪ラインから覗く瞳、こぼれる涙。熱くさせてくれるものが大きかった。彼は絶対これから大きな俳優になることをドラマオタクが太鼓判を押します。

 こうして夢中になって一気に5話分を見ていたら、いつの間にか高熱が下がっていた。私の解熱剤になってくれたことも、いい思い出の作品。久々にレコーダーから消すことができないので、この年末年始にまた見たいと思う。

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小林久乃

こばやし ひさの

コラムニスト、編集者

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(K Kベストセラーズ)にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊行)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーションなどを業とする、正々堂々の独身。最新情報はhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

 

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結婚してもしなくてもうるわしきかな人生
  • 小林 久乃
  • 2019.11.30